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情報発信に使っていた はてなダイアリーというのは、具体的には麻雀業界日報(id:izumick)という名前だった。随分ご大層だが、まあその辺はノリだ。タイトルで大風呂敷を広げて、後で回収できない、というのが自分のパターンらしい。
日報の更新について今思う時、楽しかったことよりも苦しかったことの方が記憶に鮮やかだ。ブログを通じて貴重な仲間と知りあうことができ、その事は大きな糧だったが、更新そのものを楽しむ心境にはなかったような気がする。その辺りを少し思い返してみたい。

まず一番大きなものは、義務と趣味との乖離だ。いくらオフィシャルな情報を提供していくという使命を自らに課していたとはいえ、ずっとそれを続けることは不可能だ。いのけんさんみたいに、リビドーの赴くまま更新しているような人でさえ*1、時折投げやりなエントリーが見られる。公の情報を自認するならなおさらだ。
一方で自分の趣味嗜好が、どう考えても一般受けすることはなさそう、という認識もあった。自分の趣味に走れば、確実に読者は増えない。かといって人受けするような文章を書けるような器用さはないし、元来怠け者なので人に説明する、ということが好きではないし、自分の好きなものを人に分かってもらいたい、と真剣に思うことがない。じゃあ何で更新続けたかと問うとき、やっぱり義務感しかなかったと思う。
2つ目は、そもそも情報が少なくて、しかも採り上げるべきかどうか迷うことも多々あった点だ。
麻雀業界というのは、自分の認識の中ではアーキペラゴ(多島海)のようなもので、色々なジャンルが浮島のように点在している。麻雀マンガとか、フリー麻雀店とか、サンマとか、プロ業界やその中の各団体とか、セット麻雀店とか、会社での特殊ルールとか、海外事情とか、モンド21とか、戦術本とか、健康麻将とか…交流が密だったり疎だったりはするが、基本的にお互いはお互いを別のジャンルだと見なしている。もちろん、自分もその中の「フリー麻雀店チェーン」という狭い地域の住人だった*2
時は7年前、ネットで麻雀業界の情報が公開されることは稀だったし、ネットならではの表現やネットマナーへの理解も不足していた。そんな中で、採り上げるに足る、また採り上げても問題ない情報を選ぶというのは難しい。麻雀プロから「自分の日記はプライベートなので紹介しないでくれ」というメールを貰ったこともあるし、レートを記載している麻雀店に関しては、何かあった時責任取れないので、なるべく紹介しない方針だった。
とにかく目的が「裏情報じゃないものを発信していく」だったので、横断的な更新を心がけていた。まあこれは、自分が戦術サイトとかには全く興味がなかったせいもあるが。それに伴なう苦痛というのは、やはり積み重なっていくようで、しばらく経った時、徐々に意欲が減衰していくのが分かった。

*1:自分はそれが大好きだし、凄いと素直に感服している

*2:細かいようだが、全国規模のチェーン店と地域の店とでは、経営姿勢が異なるのだ

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近代麻雀』2月15日号を読んだ。地方都市ではキンマは3日遅れで到着する。「オバカミーコ」が終わっていた。色々感想はあるが、結局おなじ業界でくっつくのか、という、諦めのまじった感慨を覚える。
実際、麻雀のできる男は、多少なりとも麻雀に興味がある女性にとって魅力的に映るものらしい。才能の輝きがあれば、少々ファッションが薄汚かろうと、コートやカバンにタバコの臭いが染み付いていようと問題ではない。そういう意味では、本質を見抜く事ができる力を持っている、目の高い女性が多いということなのか。


よくよく考えるに昔のことではなかったが、多分まだ続くと思う。

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広告関連でもう一つ思い出した。ゲーム代の話だ。
会社では、レートの情報はもちろんだが、ゲーム代も基本的には広告に掲載しない、という内規があった。これは主に、風適法の規定によるものだったと思う。
風適法の施行規則によれば、まあじゃん店の遊技料金は、1人1時間だと630円が上限、1卓1時間だと2,520円が上限だ*1。店の遊技料金は、1ゲームあたり600円、トップ賞100円。ヨンマだったので、1卓あたり 600×4+100=2,500円となる。
「トップ賞」は知らない人には理解できないだろうが、ゲームでトップを取ったお客さんだけが100円多く(つまり700円)払う、という仕組みだ。賢明な読者諸兄にはお分かりのことだろうが、ゲーム代の上限が決められている中で、もっとゲーム代取れないものか、というハウス側の意図が見える。また、消費税をきちんと納めている麻雀店にとって、その100円がバカにできない、という事情もあるだろう。
ゲーム代の何が問題かと言えば、1ゲームにかかる時間が決まってない点だ。アリアリでトビありのルールなら、短ければ5分、長ければ70分くらい1ゲームにかかる。1ゲームが1時間以上かかるなら、遊技料金の上限を超すことはないが、それを下回るなら、厳密に言えば違法となる。自分の勤務先の場合、だいたい平均すると40〜45分だったので、2時間で3回くらいの計算になる。1人600円×3ゲーム=1,800円、しかし上限は1260円なので、大きくはみ出ている。
実際には、この事が大きな問題となることはなかった。風適法は、フリー麻雀店に関しては実情と著しく乖離していてザル法に近かったし、名目さえ整っていれば、つまり料金の表示を法の規定通りに行っていれば特に突っ込まれるポイントではなかった。昔あった某コスプレ麻雀店は、女性店員と同卓*2する場合は1ゲームあたり1,000円というベラボウな金額を徴収していた*3が、特に問題が出なかったようだ。
この点で厳しかったのは寧ろ税務署で、ゲーム代600円を全額遊技料金として計上するべきではなく、ドリンク代などの内訳を作るべき、という指導があった記憶がある。まあこれは、従業員が支払っているゲーム代を売上とみなすか経費とみなすか、というのが本当の焦点だろうけれども。
話が逸れた。要するにゲーム代を載せない、というのは自主規制の中でも一番萎縮したものだったと考えてよい。何度か試みようと考えたことはあるが、結局実行には移さなかった。その理由は、思い出せば書いてみたい。



多分まだ続くと思う。

*1:トリビアその1・これは自動卓の場合の料金で、それ以外の卓だとそれぞれ525円、2,100円となる。トリビアその2・サンマでも2,520円とってよい。この場合1人換算だと840円となる。

*2:一緒にゲームを楽しむこと

*3:更に入店時にチャージを取られた

6

麻雀店のネット広告の難しさ、3つ目は、フリー麻雀店は疑いようもなくリアルに根付いた文化であり、ネットで宣伝することの意義が見えなかった点。
当時、すでにフリー麻雀店の経験があり、なおかつネットユーザである層は少なかった。これはネットの普及にしたがって漸次増えていくとしても、新規客を呼び込まなければ広告の意味は半減する。
ネットは、とりあえず金の事とか損得とかは抜きにしましょうや、というのが常識と見なされていたし、有料のサービスへの忌避感*1も強かった。一方でフリー麻雀店は言うまでもなく、天下の回り物が人と人の間を行き交う場所である。リアルそのものだと言っても良い。しかも、ハウスは平時にも逆恨みを受けやすい。
また別の面でいうと、ネット麻雀とリアル麻雀が対立項になっていた、という事実もある。ネット麻雀「天鳳」がヘゲモニーを握る2007年より前、2ちゃんねるの麻雀板には必ず「ネット麻雀VSリアル麻雀」というスレがあった。リアル麻雀とネット麻雀、どっちが偉いか、どっちが上手いか、どっちが本物の麻雀か、という死ぬほどしょうもない口ゲンカが少なくとも5年は続いたのだ。その流れにトドメを刺した天鳳でも、今年になって「雀荘モード」導入の話題が麻雀ブログ界隈で盛んになっている。対立の根の深さが窺える。
まあ昨日も書いたように自分は臆病者で、臆病者は都合の悪い場面になると無闇に雄弁な言い訳を始めるものだ。要するにネット上の広告については、余り直接的な効果を期待していなかった、という話なのだろう。


多分まだ続くと思う。

*1:嫌儲と言うらしい

5

情報発信に使っていたダイアリーを、何故仕事と結びつけなかったのか、と問われれば、答えは「メンドくさかった」になるだろう。当時自分以上にネットの世界を知っている人間は会社にいなかったし、そういう事を扱うような部署にもいた。部署とはいっても名ばかりだったが、ある程度の意見を言える立場にいたのだから、やろうと思えば不可能ではなかったはずだ。その点で、自分は怠け者だと断言できる。臆病だった、という評を加えてもいい。
しかしそれだけでは話が進まないので、幾つか思うところを書いてみる。恐らく話が混線すると思うので、ご寛恕ねがいたい。

そもそも、自分の仕事だった、麻雀店のネットにおける広告の難しさの一つ目は、「悪評をどう捉えるか」という点にある。「悪評は評判のうち」という格言があるが、実社会であればローカルな範囲内に留まる評判が、ネットでは際限なく広がる可能性を持っている。そしてフリー麻雀店は、100%悪意を持たれる業態だ。ゼロ年代半ば頃のネットユーザーが、麻雀店の名前で検索したときに出てくるのが悪評であった場合に、どのような反応を示したのか、当時も分からなかったし、今も分からない。少なくとも担当者の自分にとって、「とりあえず知名度を上げておけばOK」という軽い問題ではなかったのは確かだ。
難しさの二つ目は、お上の介入の程度が読めない、という点だ。お上の介入について自分が知っているのは、「出る釘は打たれる」ということと、「みせしめが目的」という二つくらいだ。
今でこそブログが花盛りで、麻雀店のスタッフブログなど100を超える数がありそうだが、当時定期的に情報発信する麻雀店というのは相当珍しかった。自分が入社した時点で、自前のドメインを持っていた麻雀店というのは、自分の所しかなかったと思う。加えて店舗数が多く、PVも2004年で確か月40,000くらいあった。担当者の感覚としては「板から釘が飛び出ていて、『打ってください』と言わんばかり」だ。
一度介入を招けば、店の営業にかなりの支障を来す。悪評はひょっとして知名度アップに貢献するかもしれないが、営業停止は売上をダウンさせるだけだ。広告を打つことによってそんな事態を招くなら、広告の価値はない。

4

はてなダイアリー(当時ブログという言葉は普及していなかった)を始めた理由をもう一つ思い出した。会社のサイトで言えないようなことを書く場所にしようと考えたのだ。
言えないようなこと、といっても、昨日書いたように裏情報ではない。店のレートとか、営業時間とか、いくらぐらい持ってくれば安心して遊べるかとか、そういった類の情報だ。個人的見解では、これは全く裏ではない。表にできない方がおかしい。
すこし根元から話を始めると、フリー麻雀店にレートがあるのは、色々問題はあろうが必要悪だ。最低限の秩序と言ってもいい。ノーレートが楽しいのは仲間が楽しいのであって、レートを乗っけないから楽しいのではない。他人と囲むなら、レートは自分の裁量の範囲内であった方が良いし、それを禁じるというのは私的自由の原則に反する、というのが今の所の見解だ。
しかし勿論、そんな事を会社のサイトで主張するわけにはいかない。いつ何時お上に目をつけられて、証拠として突きつけられるか分かったものではない。
加えて、当時麻雀店のサイトというのは珍しかった。店舗数が多いこともあって、大体2001年〜2005年くらいまで、麻雀店では最大のPVを集めていたと思う*1。そうなると、迂闊なことはますます言えなくなる。レートの情報というのは、少なくとも自分の会社では載せてはいけないものだった。
だが考えるに、レートと種銭は、麻雀店の情報を求めているお客さんにとって最も大事な事柄だ。それを伝えられないと、わざわざサイトを運営するメリットは薄くなる。
そのような不便を補うために、勝手サイトのような形で自分のページを持とう、と思ったのはある程度事実に近いだろう。しかし実際には、その形ではてなダイアリーを活用したことはなかった。

*1:他を知らないので何とも言えないが

3

こうやって思い出していると、自分がいかに駄目な社員だったのかが思い返され、正直うぁあとなる。よく解雇されなかったものだが、しかし退職時に「お前みたいなのを雇えるのはうちくらい」と大きなお世話な一言を頂戴したので、お互い様かな、と思う。
情報を発信していた頃、時期的には2003年から2004年には、一日大体4〜6時間くらいは情報収集と文章書きに費やしていた。当然会社での話だ。出張時も何とか時間を作ったたり、残業と称して会社に残って更新したりもした*1
何故そこまでやってたか、仕事が退屈だったのと、義務感だろうか。よく覚えてない。
ただ、今よりもはるかに、麻雀業界についての情報は少なくて、しかも偏っていた。偏っているだけならそこまで文句もなかったのだが、麻雀業界、特に麻雀店に関する情報は「裏情報」みたいなのを謳い文句にしているのが多くて、かなり辟易していたのは覚えている。裏というからには、当然表に流通している情報が想定される。しかし当時の麻雀業界に、表に流通する情報など皆無に等しかった。そんな中で、「裏」とかいって悦に入っているのは、アホくさい話だ。それなら自分で表を作った方が良い。
2002年にはてなアンテナを始めて、麻雀サイトの情報を収集してから、2003年にはてなダイアリーを始めた理由は、おおよそ上のような感じだったと思う。


多分続くと思う。

*1:残業代という概念はないので、これはどうでもいい